➢制作の動機
枝打ち等の過程で発生し、森林に放置される枝を林地残材と言います。林地残材は国内で毎年800万トン発生していますが、材質・形状が不均一なため加工が困難であり、利用率は9%にとどまります。しかし、こうした枝の有機的な形状は木の本来の特性です。私たちは不定形な自然木をものづくりの材料として使うことで、低未利用の資源を有効活用したいと考えました。
➢製品と社会実装
その一歩目のアイデアとして、私たちは大企業が抱える社有林に着目しています。近年、CSR活動の一環で企業による森林の保有が増えていますが、それらの有効な活用先はあまり見出されていないことが、森林管理者の方へのヒアリング等から明らかになりました。そこで、社有林から発生する林地残材を、オフィスで利用するスキームを考えました。
まず、社有林で林地残材を採取します。社員のチームビルディングを兼ね、研修等で枝拾いを行っていただくとよいと考えています。次に採取した枝を3Dスキャンし、3Dモデル空間で枝同士のつなぎ合わせ方をスタディします。ここで使う設計ツールは、ユーザーが自ら検討した作りたい形状を元に、自然木にフィットするジョイントを自動的にモデリングします。3Dモデルを元に3Dプリントされたジョイントは、設計した形状を実際の空間に正確に再現できるので、設計者の望む用途―オフィス什器や休憩スペースのシェルター、置物等―に合わせて自由な造形が可能です。以上の設計・造形支援システムを私たちはZWEIG(ツヴァイク)と名付けました。
➢材料
最近は林業の機械化で、伐採した木を土場まで運んでから枝打ちを行うようになったため、林地残材は森林に散乱していた以前と比べて入手しやすくなりました。
➢仕様
・形状決定
物理演算エンジンによって、任意に選択した枝から実行可能な形状を導出するアルゴリズムを作成しました。マウスを動かしながら形状の調整が可能で、枝の形状に合わせて適したジョイントの形状がモデリングされます。
・プロトタイプ
ZWEIGは使用する枝のスケールに応じて、建築からアクセサリーまで幅広いスケールに対応します。試作したプロトタイプは高さ約2m、面積は8㎡です。 枝分かれした枝を使うと、木の特性生かしながらジョイントの数を減らせます。
・ジョイント
樹脂材の3Dプリンタで製造しました。
ZWEIGは森林を所有する企業によるワークショップを足がかりとして、将来的に隠れたクリエーター−特別な技術を持たないけれど、自然と創作を愛する人−のために開発しています。
ZWEIGを通じて周囲の当たり前の環境が、あなたの創造性を発揮できる場所として再認識されることで、幼少期に誰もが経験したであろうクリエーターとしてのあなたの一面を発見できるでしょう。
例えば次のようなアクティビティが考えられます;オフィスの休憩所に遊び心を加える、子供たちと一緒に遊び場づくりを企画する、その人にだけフィットするアクセサリーを作る、キャンプ場に落ちている枝を使ってテントを作る。
MEKEN(ミケン)
未来を見にいく。未見。
山口大翔:2018年北海道大学工学部卒業/2020年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了後、同大学博士課程
小松航樹:2019年北海道大学工学部卒業/2021年東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修了/デンマーク、ロスキレのFablab RUCでインターンを経て、現在一級建築士事務所勤務。
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