GUGEN2020 優秀賞作品「オープンで安価なPCRを世界に届ける」開発者インタビュー
GUGEN2020にて「オープンで安価なPCRを世界に届ける」として発表をいただいたNinja_qPCRは、COVID-19を含む各種感染症やアレルゲンの検出にも使用できる、原価300ドルのリアルタイムPCRです。汎用品でも作れる安価な装置でありながら大きな社会課題に取り組んでいる点が、審査員からの高い評価を得ました。開発者の株式会社鳥人間の久川 真吾さんと久川 まり子さんにインタビューを実施いたしました。
久川 真吾 氏(左) 久川 まり子 氏(右)
●Ninja qPCRを開発したきっかけを教えてください。
数年前にオープンソースのPCR装置を開発済みで、光学機能さえ追加すればPCR検査の現場で求められているqPCR(リアルタイムPCR)に改修できることに気づきました。安価でオープンなqPCRは世界にまだ存在せず、今回のコロナ禍の中で作る意義があると思い、開発を決意しました。
「Ninja_PCR」
「Ninja_LAMP」
「LEGOを使用した試作」
●元々は携帯電話のシステム開発をされていたとのことですが、COVID-19以前からPCRの手法に着目していたのはなぜでしょうか?
日頃から夫婦2人だけの会社「株式会社鳥人間」として、色々なアイデアを形にしています。そのうちのひとつ「SpaceStationAR」はARで国際宇宙ステーションなどを肉眼で見ることができるスマートフォンアプリで、作ったことがきっかけでスペースシャトルの打ち上げに招待して頂き、ミッションに関わった理科教育を行っている企業との縁もできました。PCR装置の開発は、遺伝子実験を教育に取り入れたい企業からのリクエストに応じたことが発端です。
●Ninja qPCRは世界中の方々にも注目されていますが、どのような声や反響がありますか?
バイオ、光学、プログラマといった様々な専門家や企業が、オープンであることを理由に進んで能力を提供してくれています。中国の企業はカスタム品を安く数日で送ってくれますし、既に販売中のPCR装置を購入して発送を断ることで、寄付してくださった方もいます。
海外からの問い合わせ
●今後の目標や予定があれば教えてください。
誰でも作れるDIYモデルのほか、医療の現場でも使用できる商用モデルも作成し、FDA(アメリカ食品医薬品局)の医療機器認証を取得したいと考えています。
●その他、GUGENに応募して作品への反響など何か変わったことはありましたか?
反響はこれからですが、頂いた賞金は材料の購入資金とさせて頂いています。
●最後に、作品の製品化を目指す方々に向けて一言お願いいたします。
今回は、オンラインでの配信がメインでしたので、直接知り合えたのは、参加者の方々だけと少し残念でした。ただ、そのぶん多くの方に知っていただける機会になった面もありました。SNSでメッセージをいただいたり、フォローしていただいたりGUGENに応募することでつながりが増えました。
●作品の製品化を目指す方々に向けて一言お願いいたします。
デモ機を作るだけでなく、量産して市場という本当の評価に自らを晒すことは、大きな成長につながります。私達夫婦はどちらもプログラマで、ハードウェアのスキルは独学と仕事を通じて身につけました。コストを抑える方法は様々あり、優れた方々もいます。過度のリスクや独力ですべてをカバーする必要はありません。
製品化には悪い面もあり、見下したり、歪んだ正義感から嫌がらせをする方さえいます。作ることはただ楽しいことではなくなります。その中でP板さんは、私の初製品の基板でも丁寧に見て、適切なアドバイスをくださいました。もし技術的な問題をお持ちなら、相談されると良いと思います。
どのようなことがあっても、作らない理由ではなく、より良いものを作る理由にしましょう。
「Ninja_qPCR」