スマートフォンのWebサイト・SNSの「ついつい見過ぎてしまう」行為に着目し、その行為を安易に断ち切ることを目的とせず、自分が陥っている状況理解を促すデバイスとして、スマートフォンとの付き合い方を探る拡張カバーデバイス「ScrollMate」をデザインした。
Webサイトを見ている際のスクロール量をさまざまな単位で可視化することにより、「このくらいの数値にたどり着いたら閲覧を止めよう」といったような意思決定を引き出し、利用者自身がスマートフォンとのより良い付き合い方を探る。
また、外部インタフェースを用いることで、普段のスマホ操作とは異なる意味付けを目指す。
■ システム構成
Adafruit 社Feather 32u4 に128x32 のOLED ディスプレイを接続したスマートフォンのカバーをFusion360 で設計し、3D プリンタで出力した。
iOS 標準 のブラウザアプリからはスクロール量が取得できないため、独自のブラウザアプリを実装し、 アプリとFeather をBluetooth で連携させる。
ブラウザアプリから、スクロール量(UIScrollView のcontentOffset) を取得し、変換した上でFeather に送信する。
アプリを立ち上げFeather と接続し、アプリ内の ブラウザからWeb サイトを閲覧すると、OLED ディ スプレイがリアルタイムで更新される仕組みとなっている。
■本作品の意義
総務省情報通信政策研究所の調査によると、インターネットの利用においては「動画共有サービスの視聴」が最も多く、次いで「ソーシャルメディア」の利用が多い。
これらを代表するYouTubeのショート動画、X(旧Twitter)などのアプリケーションでは、縦にスクロールすることで次の情報を閲覧していく。
アプリケーションのアルゴリズムによってレコメンドされた次の情報を見るために、無意識にスクロールを繰り返してしまう。
そこで、このScrollMateでは、この「縦スクロール」という行為に着目をしたデバイスを設計した。
・XやYouTubeといったソーシャルメディアのユーザー
・Webメディアを無意識に見続けてしまう傾向があるユーザー
スマホに取り付けた画面表示により、無意識にスクロールを繰り返してしまう行為に意識を向ける。「制限や規制」をするのではなく、「意識的な行動を促す」ための外部インタフェースにより、作業を中断したり、遅らせることをせずに、利用者に気づきを与えることができる。
スマホとのより良い関係性について考えるきっかけを提供する。
インタラクションエンジニア・デザインリサーチャー
武蔵野美術大学 造形構想研究科 博士後期課程在籍
エンジニア業と並行しながら、デザイン研究を行う。
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