犬や猫といったペットは、多くの抜け毛を発生させますが、その大半は廃棄されています。カシミヤやウールと比較すると、ペットの毛は硬く、太く、柔軟性がないため、加工が難しく、再利用があまり進んでいない現状です。ペットを飼う家庭では、抜け毛の処理が負担となり、廃棄されるケースが多くあります。しかし、ペットの毛を誰にとっても加工しやすい形にし、身近に感じられるアイテムにできれば、廃棄を減らし、飼い主にとって特別な思い出になると考えました。
本研究の目的は、ペットの毛をアップサイクルし、廃棄物に新しい価値を持たせることです。具体的には、ペットの毛をモール化し、飼い主にとって大切な思い出の一部として機能するアイテムの制作を可能にします。この手法により、廃棄物の削減に貢献するだけでなく、アクセサリーやキーホルダーといった多彩な形に展開できるほか、飼い主がペットをいつでも身近に感じられる、唯一無二のアイテムへと昇華させることができます。
本研究では、明治期に日本で発明されたガラ紡機の技術と、我々が独自に考案したモール制作手法を組み合わせ、ペットの毛を粉砕せずにモール化する装置を開発しました。まず、ガラ紡機を用いてペットの毛を紐状に加工します。次に、その紐状のペットの毛を2本の針金で挟み、捻ることでモールを制作します。この手法により、従来の「繊維を均等に並べて2本の針金で捻る」方法では難しかった、ペットの毛を使ったモール制作が可能になりました。また、捻る量を調整することで、ペットの種類に応じたモールを制作することができます。さらに、この装置で制作されたモールは、市販品に比べ、動物特有の質感と色合いが際立っており、飼い主にとってより親しみやすい特徴を持っています。
この装置は、ペットの毛を粉砕せずにそのまま素材を活用し、接合剤や染料を使用していません。これにより、廃棄物削減やコスト削減に寄与し、環境への負荷を軽減します。また、この装置は電気のみで作動し、環境に対してポジティブな影響を与える設計です。加えて、シンプルなボタン操作で誰でも簡単に使用できるよう設計されており、職人の手を必要とせず、自宅での制作が可能です。これにより、必要なときにいつでもペットの毛からモールを制作し、好きなアイテムに加工できます。
本研究は、ペットを飼う家庭に抜け毛を活用する新たな手法を提供します。また、ペットを飼えないユーザーにも、動物とのつながりを感じるアイテムを通じて、身近に動物を感じる機会を提供します。
本研究は、ペットの毛をアップサイクルすることで、飼い主に感情的な価値と特別な思い出を形に残す手段を提供します。この取り組みにより、廃棄物削減に貢献し、持続可能な社会への意識向上にも寄与します。さらに、開発した装置を使用することでクラフト体験を楽しみながら、ペットとのつながりをより感じることができるため、環境への貢献を促進する独自の技術として役立ちます。
小池 駿太、リュウ シセン、今井 綾音、鈴木 翔悟、勝本 雄一朗
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