世界中には多くの弱視者が存在し、彼らが陥りやすい肥満や精神疾患を防ぐ有効な手段として、弱視者向けのスポーツがあります。私達はその中でも球技に着目しました。従来の弱視者向けに開発されたスポーツは、球の中に音源を入れ、バウンドを必要とすることで、バウンド音による音源定位を可能にし、スポーツを成立させてきました。しかし、弱視者の球技の種類の幅は乏しく、彼らが運動をする際の選択肢は晴眼者に比べ多くはありません。この背景として、空中で移動する球を認識することは弱視者にとっては非常に困難であり、これまでバウンドを必要とせず、目線を上げ上体を反らしてラリーをするというようなスポーツは開発されてこなかったことが原因の一つだと考えられます。この悔しさから私たちは、弱視者の運動機会の拡充を目標に、空中で移動するバウンドを必要としない新しいスポーツ領域を生み出すプロダクト開発に取り掛かりました。
本プロダクトでは速度や軌道が調節でき、自身から飛行音がなっているドローンを球として用いた球技を開発しました。これまで弱視者間で不可能とされてきた、バウンドを要しない三次元空間を移動する球を認識しラリーするというスポーツを実現します。私達は、ドローンを球として用いることから新たなラリー手法を考える必要がありました。そこで、ガット部分の代わりに、センサーを取り付けることで、フレーム内にドローンが通過した場合、相手方向に自動で移動するシステムを開発しました。また、選手はスイングにより、ショットを打ち分けることができるため、戦略性のある試合が可能です。私たちは、常に弱視者と開発を共にし、フィードバックをプロダクト内に取り入れることで、ユーザー体験を向上させる取り組みを続けています。選手はルールを設定することで、様々な球技を楽しむことができ、運動の機会や選択肢の向上につながることが期待されます。
弱視者
本プロダクトは弱視者競技の種類を大幅に拡大する可能性を秘めていると同時に、中途弱視者はかつて可能だった上を向いてラケットを振るといった競技を再体験することが出来ます。
私たちは、世界中に多く存在する弱視者の運動機会や競技の選択肢をDrone Badmintonにより大幅に拡大することを最終目標としています。
貞末真明:発案者。ソフトウェア設計
皆川達也:ハードウェア/ソフトウェア設計
田中賢吾:映像制作
丹羽遼吾:ソフトウェア設計
落合陽一:アドバイザー
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