Syrinxは,喉頭がんなどの病気により声帯を摘出して声を失った方が、口パクをするだけでヒトに近い発声を可能にするウェアラブルデバイスです。
ヒトは肺からの空気を喉頭にある声帯で喉頭原音と呼ばれる振動音に変え、口や舌の形によって音の種類が形成されて声となります。しかし喉頭がんなどの病気により声帯を摘出すると、肺からの空気は喉に開く気管孔という穴で出し入れをするので、体内で振動音を作ることができません。このような方々が従来使用するデバイスがEL(電気式人工喉頭)です。ELはボタンを押すとデバイスの先端が振動します。これを喉の皮膚に当てることで、疑似的な振動音を生成して口パクで話すことができます。しかし、話す際に片手が塞がり、機械的で単調な音声しか出すことができない、といった課題があります。しかも、市販されてから20年以上デバイスの見た目は変わっていません。
これらの課題を解決するためにSyrinxを開発しました。Syrinxには従来のELの課題を解決する3つの特徴があります。(1) 人に近い原音を生成する機能。過去のユーザーの元の声を解析し、その声を再現する振動パターンを作製しました。また2種類の異なる振動子を用いることで広域の高さの音に対応することができ、従来のデバイスでは不可能であった女性の声でも話せます。 (2) ハンズフリーでストレスフリーな設計。振動子を首に固定できるウェアラブルデバイスとしてデザインし、ハンズフリーでストレスフリーな会話を実現します。 (3) 使いたくなるデザイン。意識したのは、公共の場で付けていても悪目立ちせず、むしろ会話のきっかけとなるようなクールな外観と、多様なユーザーの美的ニーズに応えることのできるカスタマイズ性です。デバイスのカバーは簡単に交換可能で、ユーザーの好みの色にカスタマイズすることができます。
また私たちは声帯摘出をして声を失った方々のコミュニティである銀鈴会の方々からフィードバックをいただきながら、開発を進めています。これによりユーザー目線に近いデバイスとしてSyrinxの開発に取り組んでいきます。
喉頭がん、咽頭がん、甲状腺がん、気管切開などの病気で声帯を摘出して声を失った方
Syrinxは声を失った方々が日常生活で何不自由なくコミュニケーションを取ることを補助します。Syrinxを装着することで、口パクをするだけでヒトに近い声で話すことができます。ヒトに近い声で話せる、従来の会話支援アプリはPCやスマホなどのスピーカーから声が出るので、ユーザーは自然な会話をすることができませんでした。そのため自分の口から自分の声で話せるということは患者のQoLの向上に期待できます。
電気・電子情報・機械・学際情報学を専攻する東京大学の学生4人から成るチーム。2019年7月末からプロジェクト開始。本作品Syrinxは2020年5月にMicrosoft Imagine Cup で国際TOP3、10月にJames Dyson Awardで国際TOP20にノミネートされた。今後は本作品の改良を施した後に製品化することを検討している。
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