漆芸と電子工作を融合した作品を制作しています。
キッカケは螺鈿(らでん・貝を貼り合わせて絵柄を作るもの)との出逢い。
50年前の書籍に用いられていた螺鈿に魅せられ、電子工作に利用することを思いつきました。
調べると螺鈿が光を透過することが分かりました。
その特性を活かしつつ、武骨な配線を排除するため、ワイヤレス給電で台座から電気を供給しています。
■デザインについて
本作品の造形デザインは、葉の上の雫に世界が映りこんでいる様を表しています。
また、螺鈿を通して内側から漏れ出る光が揺らぐことでいのちのない電子工作に生命を感じられるような表現をしています。
UXとしても、手に触れたとき、持ち上げた時、そして台座に戻すときに「悩まず・違和感を持たない」設計にしました。
■目的
人間が火を扱うようになり、外敵から身を守ったように、私の電脳漆繭玉の灯りが見る人の心に安らぎをもたらすことを祈りつつ制作しています。
■技術
本作は下記のステップで制作しています。
・3DCADによる筐体(繭玉&台座)設計
・光造形の3Dプリンタで筐体出力
・筐体に漆芸の塗装と加飾を施し
・オリジナルの電子基板を内蔵
■電子工作のPRポイント
・コンセント電源は5V供給
・ワイヤレス給電ではロスが出るので、上の球体側で受電できるのは4V以下に下がりLEDの光りも暗くなりますが、共振回路にて昇圧しているので、明るく光ります。
・光り方はマイコン(ATtiny10)で制御
・ワイヤレス給電を経由すると交流になるので、整流回路で直流に直してマイコンを使用できるようにしました。
・上の球体を置く際に起動電圧が高くなりますが、それもレギュレーターで安定化させています。
■解決した課題
下記の前例のないテーマをひとつひとつ確認し手探りで開発しました。
・漆という塗料が樹脂にのるのか?
・筐体の強度や重さがどのくらいだと適切なのか?
・どのくらい漆を重ねると光を通さなくなるのか?
■ご利用にあたって
必要な電圧は5Vなので、通常のスマートフォンなどで使用する電源アダプターとマイクロUSB-Bケーブルを給電台に繋ぐことで動作します。
■特筆事項
伝統工芸の手法を取り入れたうえで、現代で可能になったFab技術と組み合わせることで全く新しい照明が生まれました
社会人の女性がメインターゲットですが、アート好きな男性もきっと興味を持っていただけると思います。
仕事で疲れた時、ストレスを感じだときなどに、光のゆらぎと螺鈿の美しさに心安らいでいただけると思います。
1998年 ディレクターとして科学館展示物等を制作 2009年 プログラマー転向、テーマパークの体験展示やアプリを制作 2013年 電子部品と身近な材料で作れるオリジナルの工作キット発売 2018年 書籍(『作って遊んで科学を学ぼう! 手作りロボット』講談社)化 2019年 漆芸に電子工作を組み合わせた電脳漆繭玉の制作を開始
【展示実績】NTまるびぃ、MFTokyo2020、21世紀金沢工芸祭
この作品を共有