tricotgrapheは、編み物(tricot)を動かすことで物理的なアニメーションを再生する、手回し式の映像装置で
ある。
1ピクセルのタイムラインを1本の糸に対応させて染色した糸を装置に組み込む。
装置の機構は全ての糸を同時に引き合い、スクリーン上に露出した部分の糸の色を変えることで映像を再生する。
今回は、日本で初めてテレビ放送実験に成功した時に表示された文字であるカタカナの「イ」を64ピクセルで表示した。
従来の映像は、「現在」のフレーム1枚のみを連続して見ることで、像が動いているかのように見える人間の視覚を利用して成り立っている。しかし、この装置では「現在」だけでなく、過去と未来の画素を物理的に見ることができる。
過去と未来のフレームの画素は、普段は不可視だがプロジェクターやモニターで映像を見る際にも、空中や信号上に存在してこの装置よりはるかに高速に移動し、スクリーン上で拡散し我々の視覚で認識できるようになる。
スクリーン上で見る「現在」のフレームに対し、それら「過去と未来」は、映像の「ネガ」と言える存在なのではないだろうか。
糸による新しい質感と「映像のネガ」を同時に見ることができる機構により、従来の装置とは違う映像体験の制作を試みている。
従来のモニターやプロジェクターなどの発光体とは違った映像体験を求める人
糸による従来にない質感の映像と、その出力を得るための大げさな過程を見せるダイナミックな装置による、新しい映像体験
東京藝術大学 大学院映像研究科 メディア映像専攻所属
高校時代より映像制作を開始。世界平和を目指して制作をしている。
KDCC入選,第22,23,24,25回学生CGコンテスト ナレッジ賞,写真新世紀2019 佳作
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