INTERVIEW 05

GUGEN2020 大賞ノミネート作品「ソコタオル」
開発者インタビュー

「ソコタオル」はマッサージの際に脳波によりリラックスの度合いを記憶し、施術に対する納得度を向上させるタオルです。脳波とタオルの組み合わせというユニークな着眼点から、GUGEN2020において大賞ノミネート作品に選出されました。開発チームhanabusa Lab.の相原 泉太郎さんと江口 薫さんに作品についてのインタビューを実施しました。

相原 泉太郎 氏(左) 江口 薫 氏(右)

●チーム結成の経緯をお聞かせください

相原 私が初めてGUGENコンテストに応募したのは、2016年のGUGENコンテストからです。当時は、一人で電子工作を行なっていましたが、作品を通した仲間づくりができればと、GUGEN2016に応募しました。審査委員が憧れているライゾマティックスの石橋素さんだったことも参加へ背中を押してくれました。GUGEN2016では、本選の展示会に選ばれ、自分の製品を体験した時のお客さんの反応が嬉しくて、それから毎年、GUGENコンテストに応募しています。そのような取り組みを社内の有志活動で発信したところ、モノづくりに興味を持った人が集まり、GUGEN2018からはチームでGUGENに参加しています。

GUGEN参加作品
・GUGEN2016:Hands in Ring
・GUGEN2017:StampRadar
・GUGEN2018:わんちゃんカメラマン
・GUGEN2019:Papeet
・GUGEN2020:ソコタオル

●ソコタオルを思いついたきっかけを教えてください。

江口 脳波で操作するドローンのような玩具は知られていますが、脳波を生活の中で活用するものは少なく、可能性を感じていました。そこで、脳波で飛ばすドローンを実際に購入して、脳波から得られる情報を調査していました。調査の結果をもとに、仲間とアイディア出し会を行なった際に「脳波情報と位置情報を組み合わせることで新たな価値が生まれるのでは︖」というディスカッションに発展しました。そのディスカッションを掘り下げていった結果、身近にあるマッサージ店とそこで使用されるタオルへの応用へとたどり着きました。そして知り合いのマッサージ店でヒアリングしてみると反応が非常に良く、応募前にして多くのマッサージ師さんに「ほしいね︕」を頂けたので試作へと踏み出しました^^。
タオルを用いて位置検出を行うという発想は、導電糸を用いることで電子デバイス化の実現性も高く、この考え方を拡張することでマッサージ店以外の応用の可能性も感じられました。

ソコタオルと脳波センサ

●脳波の測定にあたってプログラム面で苦労した点や工夫した点はありますか?

相原 初めは玩具のドローンの付属品である脳波センサーを用いて検討していました。これは脳波に応じて赤外線の信号が変化するものでしたが、脳波には個人差があり、得られる信号が安定しませんでした。そこで、museという専用の脳波計に変更することで得られる情報を安定化することができました。当初は、museとraspberry piとが通信することにより、システムの小型化を目指しました。ただ、利用したバージョンのmuseが情報を独自プロトコルで送信しており、解析ができなかったためraspberry piとの通信は諦めて、動作保証されているPCをシステムに加えています。

開発中の様子

●導電糸を使用するにあたってハードウェア面で苦労した点や工夫した点はありますか?

江口 導電糸は、普通の糸よりも硬く、また試作用に試しに買ってみた100均のタオルは思ったより薄く縫い付けるのに苦労しました。大きなタオル全面で触れられた位置を検出するために、今回は48箇所にセンサー面が露出するように導電糸を縫い付けたのですが、作業の間に我が家のミシンを壊してしまいました(笑)。根気よく手縫いで頑張りましたが範囲が広すぎるため早々に諦め、コロナ禍で売り切れが続出する中、二代目のミシンを何とか手に入れて作業を継続することで、申し込みに間に合わせることができました。

裁縫中のソコタオル

ソコタオルの静電容量検知回路

●具現化、製品化した場合のビジネスプランなどがあれば教えてください。

相原 今回は、マッサージ屋さんにおいて、お客さんが揉んでほしいところを脳波で伝えること、感じ方をお客さんとマッサージ師との間で共有することによる施術の納得感を目指しました。まずは、これを実際に実現し、マッサージ屋さんへ貸し出すことで収益を得られればと考えています。また、タオルで触った場所の感じ方を、視覚化した脳波でコミュニケーションするというアイディアは、様々な場面で利用できると考えています。例えば、体が不自由で思うように感じ方を伝えられない方の補助ツールのように、社会福祉の分野でも活用できたらと考えています。

ソコタオルを利用している様子

●GUGENに応募して作品への反響など何か変わったことはありましたか?

江口 ソコタオルは、場所による感じ方の見える化という、分かりやすい作品のため、”自分も使ってみたい”という反応を多く頂きました。また、GUGENをきっかけに、”たたけるディスプレイ“のチームと知り合うことができました。たたけるディスプレイのコンセプトとソコタオルの考え方も非常に相性が良いことがわかり、”たたけるディスプレイ”と”ソコタオル”の技術を融合した新たな取り組みも始まっています。GUGENに参加することで、お互いの強みを活かして相乗効果が期待できる面白い仲間が増えていくことを実感します。

●これからGUGEN に挑戦しようと考えている開発者に向けて、一言アドバイスをお願いします。

相原 GUGENは、未来の日常を想像するコンテストです。GUGENへ取り組むと、なにげない日常に対して、より良い変化を与えるアイディアを考えるようになります。また、アイディアを形することで、より相手に自分のアイディアが伝わりやすくなり、フィードバックも得やすくなります。GUGENという、自分と作品を成長させる絶好の機会に、是非、挑戦してみましょう!

江口 開発者が抱くプロダクトへの感じ方と、第三者から見た感じ方にはギャップがつきものです。技術は開発者同士でブラッシュアップするのが早いですが、自身のプロダクトのコンセプトやプロダクトが身近にある世界をどう感じるか、開発者以外の方々にヒアリングすることをお勧めします。より上位の概念で早くブラッシュアップできるので、ぜひ早い段階で友人や周囲の人に感想を聞いてみましょう。