INTERVIEW 03

GUGEN2019 大賞作品「Planter」開発者インタビュー

GUGEN2019 で大賞を獲得した家庭向け小型風力タービン「Planter」。世界的に石油などのエネルギー資源が今後枯渇していく問題が示唆されていますが、日本では日常生活においてエネルギーの課題を意識しにくいのが現状です。「Planter」では日常生活において誰もが電気の自給自足を意識することができるようにデザインや仕組みが工夫されていました。ユニークなデザインと機能を併せ持つ「Planter」の開発者の関谷 直任さんに、製作のきっかけや苦労などを伺いました。

関谷 直任 氏

●Planterを製作したきっかけを教えてください。

Planter は大学の卒業研究として製作しました。大学の集大成としてソーシャルグッドにつながる大きなテーマに取り組みたいと思い、エネルギー問題についての研究を始めました。中でも自家発電に注目し、いざ自分でもやってみようとしたとき、専門的な知識が必要だったり設置に大規模な作業が必要だったりと、敷居の高さに挫折してしまいました。その時、私と同じように自家発電をしたいと思っていても、その敷居の高さになかなか踏み出せない人が他にもいるのではないかと考え、そんな人へ向けたプロダクトの開発を始めました。

●特徴的なデザインですが、どうやって思いついたのですか?

Planter はベランダに設置することを想定しています。ベランダは塀があることや風が吹き抜けないことから、風が入り組んで四方八方に流れます。そんな風に柔軟に対応するため、風車の設計は「サボニウス型」を基本としました。また、ベランダは塀があることで、低い位置より高い位置で風がよく流れるので、発電機をベランダの洗濯竿に吊すことのできる設計にしました。Planterはベランダという生活に近いシーンに設置するため、風見としての機能も重視しています。風車は低速な風でも回り、その姿が美しくなるようにデザインしました。

家庭向け小型風力タービン「Planter」

●発電機を作る際に苦労したことや工夫したことを教えてください。

まず、苦労したことは発電効率の調整です。ただ発電効率を上げすぎてしまうと、微風では風車が回らなくなってしまいます。先ほども申し上げたように、Planter は風見としての機能も重視しています。ベランダという生活に近いシーンに設置するにあたって、強風でなければ風車が回らないというのは避けなければなりません。バッテリーに充電できるだけの出力は確保しつつ、できるだけ軽い力で回るように、磁石の大きさと数、コイルの太さや巻き数などを調整し設計しました。

自作したコイル巻き治具

また、風車の設計も発電効率に大きく作用します。より力強く回るように設計にしつつ、できるだけ圧迫感を軽減できるように工夫しました。

調整中の「Planter」

●今後Planter をブラッシュアップしていく予定があれば教えてください。

Planter の本質は「ちょぴっとの発電を体験すること」にあると考えています。今回のPlanter では住居のベランダを想定した結果、このような姿に至りましたが、シーンが変わることで姿も体験も大きく変わると思います。公園・学校・海岸沿い・畑・地下鉄など、シーンを想定し、そこにはどんな筐体・体験が生まれるか、アイデアを展開しています。いずれは何かしらの形で具現化したいと考えております。

●これからGUGEN に挑戦しようと考えている開発者に向けて、一言アドバイスをお願いします。

GUGEN ではモノ作りに関わる様々な人と出会うことができます。自分の作品を通じて様々な意見をいただけたり、他の作品を通じてその開発者の熱い思いや願いに触れることができます。これらのインプットは自分の作品のその後のブラッシュアップにとても役立ちます。このように、GUGEN はただエントリーされた作品が評価されるだけでなく、参加者や審査員の方々、さらには展示会に来られた方々が相互にコニュニケーションを取ることができることが特徴だと思います。作品の完成度も大事ですが、何よりその作品に込めた思いや願いが大事だと感じました。