GUGEN2016 大賞作品「bioSync」開発者インタビュー

GUGEN2016で大賞を獲得した運動感覚共有ウェアラブルデバイス「bioSync: 身体接続技術に基づく新しいインタラクション」。その開発者である⻄田 惇さんは現在、筑波大学 大学院 に所属しながら、リハビリテーションなどの分野において病院の先生や心理学者と共同で研究を進めています。そうした取り組みなどから、世界を変える30歳未満の若者たちとして「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN」も受賞された西田さんに、「bioSync」を作ろうと思ったきっかけからGUGEN出場までのプロセス、そして受賞後の活動などについてお聞きしました。

西田 惇 氏

●「bioSync」の特長を教えてください。電極を通して筋活動の生体電気信号の計測と人の筋活動を制御するための筋電気的刺激を同時に行うことができるシステムとなります。これを応用して、人々の間で筋活動を共有でき、自身の筋活動に基づき相手の筋をコントロールすることができるインタラクションを提案しました。

bioSync

例えば、医師と患者の間で筋活動を共有することで、言葉では無く生体信号そのものをbluetoothで飛ばして筋活動に関するコミュニケーションが筋肉を通じて行えるようになります。
また、「同期」とは別の機能として、例えばパーキンソン病の症状を「再現する」といったこともできます。これにより手の震えが止まらなくなり、スプーンでものをすくうということが困難になります。この不便に感じていることを実際に体感することで様々な解決方法を見出すことが可能になると考えます。実験では、実際にパーキンソン病の患者が使いやすいようにスプーンの形状を改良し、より使いやすいスプーンの形を探索・提案することができました。

P板.com COO 後藤が「bioSync」を通して筋固縮した状態となりスプーンの持ち難さを体感

●bioSyncを作るきっかけをお聞かせください小学校の頃からたくさん理科の実験をやったり、SF映画を見ていたので、その影響は受けているかもしれません。中学生の頃には生体信号をつかったインタフェースの電子回路を作ったり、自分の筋肉を使ってPCを制御したりするデバイスを作っていました。現在在籍しているサイバニクス研究センターでは外骨格ロボットを使った(歩行)リハビリの研究しています。身体の情報は「身体知」(例えば職人さんが持っている特殊なスキルのようなもの)と言われ、人の身体動作を明確な記号や言葉では表すことができません。それを直接的に身体から情報を取って顕在化させ、共有することで教える側と教わる側の円滑なコミュニケーションを支援するという研究をやっていたところから「bioSync」をつくるに至りました。

「bioSync」をつくるきっかけを語る西田さん

●GUGENに応募された理由をお聞かせくださいGUGEN応募前は学会とかで発表をしたり、色々な所でデモをしていました。その時に「製品化して欲しい」や「実際に病院で使えるようにして欲しい」などの声をいただき、ぜひ自分で研究費を調達できたら良いなと考えていました。
デモ機を作るにあたり、研究室に基板加工機があったので、それを使って基板を切削し、自分ではんだ付けしていました。そうすると接触不良やショートなどがよくあり苦労していました。またもっと高密度化したいのと電極を増やしたいという機能的な面や、同じ基板を複数枚作らなければならないなど課題が多くありました。その課題がGUGENで大賞をとることでの賞金+副賞により解決されると思い応募を決めました。

「bioSync」の基板と付属アクセサリー

●これからGUGENに挑戦しようと考えている開発者に向けて、一言アドバイスをお願いしますGUGENの挑戦には「インタフェース」「インタラクション」「エクスペリエンス」という三つのレイヤーを考えることが重要になると思います。「インタフェース」はデバイスそのものであり、作る「インタフェース」から入ってしまうと提供できる「インタラクション(動作)」や「エクスペリエンス(経験)」は限られてしまいます。どういう「エクスペリエンス」を提供すべきかを考えると必要な「インタラクション」が決まってきて、それを実現する「インタフェース」は何でも良くなってきます。今回の「bioSync」場合、他者の運動を自分のように感じ取れる体験を作りたいという目標を掲げ、人々の間で運動をミラーリング(or コピーする)というインタラクションを提案し、これを実現するためのツールとして筋刺激であったり生体信号の検出という「インタフェース」にたどり着きました。モノを作る上で何よりも「エクスペリエンス」の設計が重要かと考えます。
自分が作っているデバイスが「誰の」「何のための」デバイスであるかというのを設定して研究することが重要と考えています。最近は色々なモノを組み合わせてできる事が増え、できる敷居が下がっている時代だからこそ、「何のために」するかが重要だと思います。
作って楽しいという趣味の範疇を超えて、もう一歩踏み出した自分なりのストーリーに基づいて作ったデバイスを、日本から発信してほしいと思います。